第3回 特別上映会 11月10日(日) 横浜市西公会堂 |
『名もなく貧しく美しく』オリジナル字幕付 |
黄田規子さん:出演者に手話を指導
王田秀夫さん:黄田さんのご子息。一郎役で出演
[FAX]横浜市聴覚障害者協会 045-475-2112[注]
[注]諸般の事情により、「電話予約」は前回の上映会をもって終了させていただきました。電話予約をご利用されてきた方々には大変ご不便をおかけしますが、プレイガイド(書店・映画館)をご利用いただきますようお願いいたします。
聴こえなくても強い絆で生き抜く聾者夫婦。二人の手話が紡ぎだす、日本映画屈指のラブシーンが見る者の心をゆさぶる。現代に生きる全ての人に贈る珠玉の愛の物語。音声場面にオリジナル字幕付上映。
耳の聞こえない秋子は、空襲で母を亡くしたアキラを家に連れ帰るが、買出しから戻るとアキラはいなかった。終戦後、夫が死ぬと嫁ぎ先を追われ実家に戻った秋子だが、秋子のせいで結婚できないと思っている姉信子と、ヤクザな弟弘一は秋子に辛く当たった。
秋子は聾学校の同窓会で出会った片山道夫に結婚を申し込まれる。一度は断る秋子だが、聞こえないが故に駅員から暴行を受ける道夫を見て結婚を承諾する。しかし最初の赤ちゃんは死んでしまう。二人の耳が聞こえないために。
母たまが秋子夫婦と同居することとなり、秋子は2人目の子一郎を生む。たまに買ってもらったミシンで洋服屋の下請けを始めた秋子だが、一郎は長じるにつれて秋子を疎んじるようになっていった。秋子は自分の耳が聞こえないためにいい母親になれないと悩む。ある日弘一が秋子のミシンを無理やり奪っていった。全てに絶望した秋子は道夫に置手紙を残して弘一のもとに向かう。置手紙を読んだ道夫が後を追い、そして…。
日本で初めて聾者を主人公にした映画。松山善三初監督作品。滞在先のフランスのホテルで、道行く聾者の手話を見たのがきっかけという。現在でも障害者に対する差別はなくなったとは言い難いが、この当時の障害者とその家族に対する社会の態度は今とは比べ物にならないほど偏見と差別に満ちたものだった。この映画でも姉信子と息子一郎にその様子をうかがうことができる。そうした中で、二人で支え合いながら生きていくと誓った聾者夫婦の、互いを信じあう崇高なまでの愛の姿が私たちの胸を打つ。障害を持ちながらの貧しい生活。それでも二人の姿を見ていると、本当の幸せとは何であるかもう一度考えさせられる。
主演の二人にとって手話の習得は相当難儀だったようで、「この映画が製作中止になってくれないかなァと願った」と高峰秀子は著書「わたしの渡世日記」で述べている。しかし秀子はその上見事に聾者的な発声も習得した。今回は映画の出演者に手話を指導した黄田貫之氏(故人)の夫人規子さんと、夫妻のご子息で小学校5年生の一郎役を演じた王田秀夫さんに撮影当時の思い出等を語っていただく。
文部省特選映画。サンフランシスコ映画祭主演女優賞受賞。ブルーリボン賞脚本賞受賞。東宝が実施したもう一度見たい映画アンケート第1位(黒沢明監督作品以外の部)であり、日本語字幕をつけた初めての日本映画でもある。この時の字幕は手話がわからない聴こえる人のための字幕であり、今回は聴こえない人のために音声場面にもオリジナル字幕をつけて上映する。この映画をきっかけにして、同じ年に日本で初めての聾者による聾者の映画『楽しき日曜日』(監督深川勝三)が製作された。
横浜キネマ倶楽部第3回特別上映会「名もなく貧しく美しく」チラシ_表
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横浜キネマ倶楽部第3回特別上映会「名もなく貧しく美しく」チラシ_裏
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